楽園追放を手放しに褒められないたったひとつに理由
楽園追放見てきました。
いやあ、本当に面白かった。
もう文句の付けようもなく、もうちょっとああした方がいい、こうした方がいい、というのは個々人であるでしょうが、そんなのはそれこそ個人の好みの問題ですし、こういうところが弱い、ああいうところが弱い、というのも中華料理屋でうまいイタリア料理が食べたいとほざく様なもので、よそへ行ってくれ、といった感じ。
ストーリーは王道・オブ・ザ・王道で、ここまで行くとかえって空中分解してしまいそうなものですが、それを見事にコントロールしきっていて、製作スタッフの自制心に感服してしまいます。
アニメーションの滑らかさ、動き、演技。アクションの派手さ、外連味、抑えるところを抑えた演出。見ていて背筋に震えが走りましたね。
これはもう2014年アニメの最高傑作ですし、今後もしかしたら3DCGアニメとして部分部分で突出する作品は現れるかもしれませんが、総合力でこれを越えるものは出てこないかもしれません。
見に行って損のない作品でした。
で、僕が楽園追放を手放しに褒められない理由なんですが、公開時期が遅すぎた事に尽きます。
蒼き鋼のアルペジオやシドニアの騎士(あるいはてさ部)がテレビシリーズですでに存在している世界で、フル3DCGの最高峰を見せつけられても「そりゃできるでしょ……」という感想しか浮かんできません。
ドリームチームに金と時間を与えても傑作が出来上がるとは限らないというのは重々承知していますが、それでも劇場版としての予算と2年のスケジュールがあれば現在の技術ならこれくらいのものは出来るでしょう、という思いが捨てきれません。
それに付随して、王道であるが故の展開の予想のしやすさ、狙って作られた90年代SFっぽさ、2000年代SFっぽさ、キャラクター、それぞれの要素がロートルのロートルによるロートルのためのモノに見えて吐き気を覚えます。
これらはちゃんと狙って作られた要素で、そういう「古臭さ」であるとか「既出感」も承知の上で出来ているのはわかるんですけどね。
なんでしょうね。僕はもっといい意味でも悪い意味でも裏切られたかったんですけど、完全に理想の、予想の範囲内に収まってしまって、裏切られなかったのがすっごく納得いきませんでした。
これがアルペジオ放映前に存在していればもう心酔していたんでしょうが、残念ながらクオリティのために時間が必要で、仮にアルペジオ前に出来上がっていたらこれほど面白くもならなかったでしょう。また、ストーリー展開も裏切られるようであれば話のアラが今よりも目立って着地できなかったでしょう。
ないものねだりなだけなのは分かってるんですけど、もっとバランスの悪い作品であって欲しかった。それに尽きます。