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ファーストピアスで恋を刻んで(Klara Works/霧咲空人)感想

ネタバレ全開で行きます

C87で頒布していた陽炎&不知火本「うわさのキッス」に続いて描かれた摩耶&鳥海本。

前作ではキスという直接的な愛情表現を使ってのお話で、読んでいてこっぱずかしくて顔が熱くなるテイストだったけど、今回はピアスというアイテムを使いややドライな、それでいてその根底に流れる感情はやや粘性のあるものを描いていてグッときた。

鳥海のピアスを切っ掛けとして始まった物語がまたピアスによって収束し、ふたりの先がどうなるのか、続きを読みたくなる余韻を残しての終わりでスッと読める。また天龍を介した噂話、愛宕による導きと、サブキャラクターの登場も気持ちよく入ってきて「確かにコイツならこうなるよなー」と納得する。

二人の未来に幸あれ、と祈らずにはいられない作品だった。

 

ところで部屋割りに関して最初は鳥海と摩耶の相部屋かと思ってて、307の表札掛けに鳥海のしかなくて疑問に思ったんだけど、読み返してみたら301が衣笠でここも1枚しか掛かってなかった。重巡クラスは一人部屋らしい。更にその後の廊下ですれ違うシーンを考えると、摩耶と鳥海の部屋は同じフロア(それも隣部屋とか)にあるんじゃないかな、と思う。

そういう部屋の位置関係を考えると、摩耶が鳥海の部屋に遊びに来るのは本当に特別でもなんでもなく日常で、それに対して鳥海が抱いているモヤモヤとか、摩耶の屈託のなさとかが思い浮かぶ。

まただからこそ、鳥海が「顔に書いてある」なんて摩耶の変化に即座に気付いたのだろう。あるいは普段は出撃前に暇潰しに来ないとか、普段摩耶はマンガを読まないとか、手に取ったマンガが2巻である事とか、そういう点から推測した、とも取れる。なんにせよ作中で描かれていない部分の二人の関係を想像するに足るだけの情報が散っていて、そこを妄想するのも楽しい。

ちなみに表札掛けが4枚まで掛けられることを考えると、駆逐クラスなんかは4人部屋の可能性もあるし、はたまた旧来の施設をそのまま使ってるだけで、今は皆個室なのかなぁ? それにしちゃ部屋が狭いし、4人用の表札掛けの大量に発注して、それを個室にも流用してるんだろうか? まあ単純にアニメからの流用か。

 

あとは身長差があるのいいよね、と思ったんだけど、表紙以外で鳥海の方が背が高くなってるコマがなくて違うっぽい。冒頭部だとやや摩耶の方が位置が下に描かれてるけど、これはベッドとチェアの差と、遠近感を出すためのものだろうし、後半のシーンではほぼ横並びで描かれている。いや、なんか勝手に「姉より長身の妹が姉に恋慕するのいいよね……」って思ってしまっただけなんだ。

そういえば作中の艦娘が言う「姉妹」って、血縁として物なのか、それとも同型艦によって結ばれたリレーションシップとしての物なのか、どっちなのかで受け取り方がやや変わる。血縁と思って読むのと、義理と思って読むのと、どちらも面白い。

艦これの同人は「原作を二次創作が解釈する自由度の高さ」もあるんだけど、そこから更に「二次創作読者が解釈する自由度の高さ」も豊富なのがいいのかもしれないなぁ。

 

他に細かい話をすると、表1のクラーラ・ワークスはなしにした方が好みだったなぁ。表紙のデザイン全体はゾゾッとくるけど。恋の字だけ色がピンクなところとか、文字の配置とか、表と裏で対応してるのとか(これは前作でもしてたが)、読んだ後で意味に気付く事になるし。

 

それと背景の描き込み量が増えたから、9ページ1コマ目の摩耶の驚きの白背景が際立つとか、「クソが」の使い方が本当に上手くてきゅんとするとか。あの「クソが」は本当に白眉で、あれがあるからこそキレイに終わってるよなー。

 

うん、じゃー、そんなところで。


【艦これ】「神戸かわさき2新刊「ファーストピアスで恋を刻んで」」イラスト/キリサキ [pixiv]

 

http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/28/62/040030286230.html