非Aの梯子(木屋瀬梯子/段)
2015年5月4日の第何回かよくわかんないけど文学フリマにて入手。
表題作、非Aの梯子の他、おはよう海賊、まぼろしの腐りの3作が掲載。50ページ。
50ページとは思えない読み応えのある1冊だった。キーアイデアに触れずに感想を書くのが難しいので臆せず書いていくぜ。
- 非Aの梯子(なるえーのはしご)
観測によって世界が変わる話。
非Aと書いてなるえーと読むのがまず面白い。なんでなるえーなのかは作中で示されているけど、その世界観の構築が脱帽ものだ。使っているアイデアとしてはマトリックスを現実世界で行う感じだけど、その表現の仕方で全然印象が変わる。本作では主人公が企業に雇われる形で秩序側として描かれるが、なんでそうなっているのか、なんで敵側の人間が現れるのか、ちょっと想像してみるだけで更に面白くなる。
読後感としてはジャンプにおける連載前の読切作品みたいな印象を受けた。是非連載版を読んでみたい。
- おはよう海賊
海賊放送の話。
滅びかけの世界でラジオを放送するという話はいくつか読んだことがあるけど、身体性を失った人類の自殺を止めるために全知覚を乗せた海賊放送を行う、というのは白眉。
なんとなく福山雅治魂のラジオが終わるに当たり、氏が「中学生くらいの頃、まだインターネットもなくコンビニなんかも普及してなくて、親が寝てしまうとテレビも見れず、夜に世界とつながれるのはラジオだけだった。布団をかぶって、ラジオの音だけを頼りに世界とつながっていた」と言っていたのを思い出した。
世界と自身との繋がりにおいて、身体性を失った人類は、夜に布団をかぶって暗闇の中でラジオに耳を澄ませる過去の自分を彷彿とさせた。
また、死にかけている人類に呼びかける人造人類は、一体なんなのか。人とはなんなのか。わずか6ページの中に問いかけが詰まっている。
- まぼろしの腐り
幻想的な表記とは別に、その背後に流れる現実への眼差しを感じられる作品だった。
うーんうーん。なんだろう。天使がやってきてふわふわ~っとしてるけど、うつ病っぽい。天使の記述と記述を介さない私というのが、社会を許容できない私と読めた。
時間感覚がめちゃくちゃになったり、どこかへ行きたいのにどこへ行けばいいのか分からなくなったり、そういうところが「らしさ」であった。
通販しているようなので是非に。