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267 - 二兎春花の夢は二度叶う(ガルラジ岡崎2ndシーズンに対する解釈)

始めに

garuradi.jp

去る2020年8月9日(日)~16日(日)、計8日間にわたって開催された「ニコニコネット超会議2020夏」にガルラジが参戦した。
その名も「超ガルラジ」である。
8月9日のチーム双葉を皮切りに、8月10日チーム岡崎、8月11日チーム富士川、中2日開けて8月14日チーム御在所、そして最終日、8月15日チーム徳光という順番で、1stシーズン第1回から2ndシーズン第6回まで、およそ6時間ぶっ通しで流すという企画だ。
ガルラジ自体がそもそも無料で配信されているし、一挙で流すのに向いているようなコンテンツではないと思っていたのでやる意味があるのか不思議だったが、どうしてどうして、蓋を開けてみれば各日大盛り上がりだった。
その上初日、開幕早々に「ガルラジニュース」として嬉しいお知らせがあった。2020年冬公開を目指して新作が作られるというのだ。
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更に最終日、その詳細として2人×7組の14人でのラジオということも発表された。
これは振り返りレポートにも書かれているように、オリジナルチームである3人でのラジオだと感染対策が難しく、その点を満たしつつ新しい何かをということで生み出された策のようだ。実際、どういう組み合わせになったら面白いことになるか、この組み合わせならこうだろうなどと、今からガルラジストたちも盛り上がっていて新作への期待が高まっている。
chokaigi.jp

残念ながら最後までちゃんと起きていられたのは最終日の徳光だけだったが、部分部分で聞き返すことはあっても全編を通して聞くことはなかったし、こういう機会でもないとみんなで一斉に聞くこともない。得難いチャンスとなり、予想外にハマって楽しめた。
そして超ガルラジで聞き返したことによって本放送当時とは違った感情が芽生え、違う視点からガルラジを眺めることになり、中でも岡崎に対しては「もしかしてこういう読み取り方があるのではないか?」と考えるようになった。
という次第でこの記事を書いている。

この記事の目的

ガルラジの面白さを考える時に、人によって挙げる要素は様々だ。
それはラジオ的な面白さだったり、現実っぽさだったり、物語としての面白さだったりする。
今回はその中でも物語としての面を扱う。

「リアルでありリアルでない、物語であり物語でない。」
ガルラジ自身が掲げている言葉であり、これほどガルラジを端的に表した言葉もない。
そして今までは「でない」の部分に注目してこの言葉を見てきていた。
だが今回は物語としてのガルラジを扱おうとしている。ここで改めて言い換えれば、やはりガルラジは「物語でもある」のだ。

一方でガルラジは物語的な「語り」を用いていない。これによって物語的な解釈を難しくしている。
というのも(つぶやきやレポートという例外はあれど)基本的には全12回のラジオから読み解くしか手段がないからだ。
そしてその12回のラジオも、ボイスドラマとして繰り広げられたものではなく、あくまで「ラジオ放送」として行われたものだ。彼女たちの内面やその背後にある出来事について何も説明してくれない。小説やアニメなら描かれているであろうエピソードが、何も表出することなく時間が進んでいく。
例えばスポーツ物で試合に負けた時、直前に怪我をしていたとか、いわゆる「フラグ」を描写することでその因果関係から物語的な納得を感じられる。だがガルラジにはそれがない。

岡崎2ndシーズン、二兎春花の進路に対してリスナーはとんでもなくやきもきした。
それは物語的因果関係が描写されなかった為に起きたことで、当時感じた自分事としての重さはまさに現実であり、物語的因果関係の描写がされないこと=情報の不在こそがフィクションを現実と感じさせる一助となったのであろう。
そこでこの記事では情報の不在により現実となった物語を、逆に情報の不足を埋めることで物語に戻すため、全12回の放送やつぶやき、レポート、小説、コミックスなどを手掛かりに再構築していく。
フィクショナルなキャラクターが現実の人間としての重みを持ち立ち上がったところに、逆に物語的な解釈を含ませることでフィクショナルなキャラクターへと戻す行いである。その点をご了承いただきたい。


二兎春花に起きたこと

岡崎2ndシーズン、二兎春花は進路に迷いに迷った。
同級生たちが次々とやることを決め、それに向かって進んでいる中、何をすればいいのか、何をしないといけないのか、見つかっていなかった。
ようやく2ndシーズン第6回にして進路を決めるが、それが何故起きたのか。
説明するために時間を遡ろう。

2018年12月まで、二兎春花の夢は「頑張る人を応援したい」だった。これは小説版や1stシーズンの溌剌としたラジオからも伝わってくるであろう。
その二兎春花が、ガルラジを通して「頑張る人を応援するのに、ラジオって向いてるんじゃないか?」となり、「ラジオこそが自分のやりたいことだったのだ!」と確信し、2019年3月、彼女の夢は「ガルラジをまたやりたい」に変化する。
更に、2019年3月時点では2ndシーズンがあるのかはまだ定かでなく、「きっと2ndあるから大丈夫だろう」のような希望的な観測を含まず、本心からの「願い」として「ガルラジをまたやりたい」が二兎春花の中に刻まれてしまう。
そうして迎えた2019年4月27日、ニコニコ超会議1日目、二兎春花は2ndシーズン決定の報を受けとる(出演者として先に情報を貰っている可能性はある)。
この時、図らずも二兎春花の「夢」は叶ってしまった。
ここから二兎春花を巡るボタンの掛け違いが始まる。

夢が叶ってしまった二兎春花はどうなるか?
夢の為に全力で走り続ける。
それはガルラジをやることであり、ガルラジを楽しくすることであり、ガルラジに関わる全てである。
ところでRe:ステージ!DreamDaysの楽曲、キラメキFutureという曲の中に「“夢中”でいるのは いま“夢の中”にいるから」という一節がある。
夢の中にいる二兎春花は進路を、つまり別の夢のことを考えられるだろうか?
答えは否だ。夢中でガルラジをやるしかない。
またこの解釈に立つと、2ndシーズン内で「いつまでも今が続けばいいのに」という旨の発言があるが、あれは進路が決まらないことへの逃避や、モラトリアムやアドレセンスの延長を願っての言葉ではなく、「夢が叶って、夢が叶い続けたらいいのに」との願いへと意味が転じる。

そう、この言葉足らずである点も、岡崎2ndシーズンへのやきもきへと繋がる。
二兎春花は自分の気持ちを言葉にするのが苦手である。
あれほど直情的に動いていて、猪突猛進で、人を動かす言葉を放つ人物が、しかしながら自分自身のこととなるとてんで駄目で、気持ちを適切な言葉に置き換えるのは下手なのだ。
そしてそれはふたつの意味で下手である。
第一に、今思っている気持ちを言葉にするのが下手である。これは語彙が足りないとかの方向だ。
第二に、自分が何によってそう感じているか気付くのが下手である。これは自身の内面を捉えるのが拙いという意味だ。
特に第二の下手さが問題で、その上二兎春花という人物は周囲から明朗快活な性格だと思われている。言うこととやることが乖離していないと思われている。だが実際には意識と無意識の間には差があった。
これによって夢が叶っているのに夢について考えなければならないという状況が発生し、岡崎2ndシーズンは混迷を極める。
表層意識の二兎は進路を決めなければならないし、頑張る人を応援したいし、ガルラジを楽しくやりたい。深層意識の二兎は夢が叶ってずっと今が続けばいいのにと思っている。この二層構造、二兎を追いかけている状態が岡崎2ndシーズンだったのだ。

この状況を終わらせたもの、それはガルラジの終わりである。
ガルラジが終わることによって、夢が終わることによって、二兎春花はようやく自分の夢が「ガルラジをやりたい」であることに気付くのだ。
それが故に2ndシーズン第6回まで彼女は答えが出せない。
ただし5回までが無駄だったかというとそうでもない。5回までで様々な可能性を検討したことで、いいと思ったことややれそうと思ったことと、自分のやりたいことのズレが認識できた。また「お店屋さんをやろう」という回によってきっと放送後、桜泉真維などによって起業についての下調べをしただろう。
そういう段階を経て、他の参加者が「手段」としてガルラジをやっている中、自分自身「手段」としてガルラジを始めた中で、「目的」としてガルラジをやろうとしている。それに気付くのが二兎春花の進路相談だったのだろう。
そうして示されたのが「一生ガルラジ宣言」であり、ガルラジをやるという夢だったのだ。

そして「ガルラジをやる」とはどういうことか。
「まだ存在しない仕事を作る」ことだ。
その手段として「起業」へと繋がっていく。
つまりあの最終回は既存の進路、枠にハマらないから起業を提示したのではなく、枠の外側へ行こうと彼女自身が願ったからこそ起業という道が示されたのだ。
以上が物語として解釈した岡崎2ndシーズンである。


終わりに

さて、この記事はタイトルを「二兎春花の夢は二度叶う」とした。
ここでいう一度目とは、ガルラジ2ndシーズンのことだ。
では、二度目はどうだろうか。
きっと叶わないだろう。
高校三年生のあの日、二兎春花が考えた形では。
しかしいつかきっと、彼女自身も、周りの誰も考えていない形で、二兎春花の夢は叶うだろう。


うん、まあ、2020年冬を目指して作られるガルラジ新作があるので、本当に、思ってもみない形で叶っちゃうわけですが。